(9月になってしまいましたが、先月のアクラ便のフライト日記、やっと書き上げましたのでアップします。)
2007年8月
(ACC)
今月2度目のアクラ便・・・(日本路線は別として)同じ路線が2度続くのはあんまり嬉しくないのですが、アクラでは好きなだけピアノが弾けるので、ピアノ弾く気満々で(楽譜をドッサリ持って)出かけました。
いつものように早めに空港に行き、シニア・パーサーとジュニア・パーサー(←パーサーは私達よりも30分リポーティングが早い)に挨拶に行くと
「あなたmisaeね! 社内誌、見たわよ!」
ブリーフィング・ルームでも
「あなたmisaeね! 社内誌、見たわよ!」
と同僚達。
今月は社内誌に、"音楽は共通語"というタイトルで私のインタビュー記事(趣味でピアノを続けているというお話)が載っているのデス。
ブリーフィングでは、クルーの紹介、(乗客数や飛行時間などの)フライト情報、フライト・セイフティーの確認をし、最後に大抵(緊急事態などの)体験談の交換をするのですが、今回の体験談で印象的だったのは、トイレに閉じ込められたお客様の話。
トイレのドアが壊れてしまった為、トイレに30分近く閉じ込められてしまったお客様がいらしたそう。 機内に設置してある斧(←機内火災で壁の裏側の消火時などに使用するのに各機2箇所に設置されています)でドアを破壊してこじ開け、救出したそうです。
そういうこともあるんですねぇ・・・こういう体験談は勉強になります。
機種は前回同様MD-11。
担当はビジネスクラスです。
前回同様、皆様ごゆ~っくりご搭乗されます。
「娘の隣に座ってもいいですか?」
と遠慮がちに聞いていらしたガーナ人のご婦人。
ビジネスクラスは珍しく満席ではなかったので了解したのですが、お客様がお揃いになり、ドアが閉まって、ビジネスクラスの乗客リストを確認すると、一人多い・・・
なんと先程のご婦人、本当はエコノミークラスなのに、赤の他人を「娘」と偽って、勝手にビジネスクラスにお座りになっていらしたのでした・・・(;-_-)
エコノミークラスのお席に戻っていただきましたが、ビジネスクラスのアメニティーキットはしっかりお持ちになって行かれました(笑)
そういう方もいらっしゃるんですねぇ・・・ちょっと感心してしまいました。
今回も離陸時にコックピットに座らせていただきました。
離陸後、分厚い雲の中に突入していく景色に圧倒されていると、俄かに操縦士達が何やら忙しそうに地上と交信しています。
航路上に雷雲が発生したので、回避する為、航路を変更しているとのこと。
モニターを見ると、レーダー上に赤く表示されている部分があり、それを避けるように旋回しているようでした。
(コックピットのモニター)
(航路を変更しているところが映し出されている)
シートベルト着用のサインが消え、キャビンに戻ります。
相棒のスチュワード(ショーン=ペン似の)ヘルマンは、
「彼女はいるけど、結婚はしないよ。 フライト先での情事を楽しみたいからね
」

などと冗談(・・・?)を言いながらも、仕事は(コーヒーや紅茶のポットをきちんと予め温めるなど)非常に丁寧。
(相棒のヘルマン)
ビジネス、エコノミー、両クラスのミールサービスが終わると、機内販売です。
ラゴス便もでしたが、アクラ便も、お買い物をされるお客様が大変多く、機内販売にとても時間がかかります。 そして、その売り上げ額の多さにビックリ・・・私が日本ベースで乗務していた頃の日本路線のようです。
日本でのバブル崩壊以降、日本路線に代わって、この頃は、アフリカ路線が機内販売での売り上げ1位なのだそうです・・・

機内販売が終わると、お楽しみの(♡)お食事タイム。
今回は、満席ではないのにミールトレイが満席の人数分搭載されていたので、クルー用のミールではなく、ビジネスクラスのミールをいただいてみました。
前菜は、オランダ発は全路線同じ(=日本路線とも同じ)です。
主菜はお魚料理をいただきました。 ティラピア(イズミ鯛)です。 ピリカラで美味しかったデス。
デザートのチーズ、クランベリーのバヴァロワも美味しかった♡
到着前のミールサービスのメニューはラゴス便と同じ。
お気に入りのライムとジンジャーのバヴァロワも試食(←もちろんサービスの後にですヨ)できてHappy!
(これがさっぱりしていて美味し~~~のデス!!)
(も~何個でも食べられマス♡)
アクラ到着後は前回同様、シャワーを浴びて(マラリア蚊に刺されないように虫除けをしっかり塗って)からクルー・ドリンクへ。
プールサイドで飲んでから、前回同様ピアノバーにピアノを弾きに・・・
前回よりも時間が早かったのか、バーではホテルの専属ピアニストがまだ演奏中でした。
「彼の演奏が終わるまで待ちましょう」
と言ったのですが、同僚達がピアニストに
「彼女のピアノを聴いてからベッドに行きたいので、少しだけ彼女に弾いてもらっていいですか?」
と交渉。
「どうぞ、どうぞ!」
と快く(ピアノの)席を譲ってくれたピアニスト。
(↑・・・今までの経験では、腕の良いピアニストは大抵快く譲ってくれます。 あんまり上手でないピアニストは、途中で別の人に弾かれるのを嫌がります。)
(今回はりきって沢山持ってきていた)楽譜は全部部屋に置いてきてしまっていたので、暗譜で弾ける曲を何曲か弾くと、ピアニストが
「10年くらい前、ゴールデン・チューリップ・ホテルで仕事をしていた時、一度、やっぱりKLMのアジア人のスチュワーデスが、ホテルを出発する前に、素晴らしいショパンの『ノクターン』を演奏して行ったんだけれど・・・もしかして、あなたですか??」
ゴールデン・チューリップ・ホテルは、その当時のクルー・ホテルです。
そのホテルでも、滞在中はいつもピアノを弾かせていただいていました。 夜は専属のピアニストが演奏していたので、私は大抵、朝食後から夕方まで弾かせていただいていたのですが、一度だけ、同僚達からのリクエストで、ピアニストにお願いして、ホテルを出発する前に制服姿で、ショパンの『ノクターン(Op.9 No.2)』を弾いたことがありました。
その時のピアニストとこの新しいクルーホテルで再会するとは・・・!
「是非もう一度、あの『ノクターン』を聴きたい。」
とおっしゃって下さったので、最後にショパンの『ノクターン(Op.9 No.2)』を弾かせていただきました。
「明日も好きなだけ弾いていって下さい。 聴きに来ます。」
と去って行ったピアニスト・・・10年も前のことを覚えていて下さったなんて感激でした。
翌日も、前回同様、朝食後すぐにピアノ・バーへ。
バーの従業員さん達も私のことを覚えていて下さって(←10日前に滞在したばかりでしたから)、すぐに演奏させていただけました。
(ピアノバーのとても気さくな従業員)
今回は楽譜もいろいろ持って来ていましたので、演奏できる曲目も増え、1時間半演奏しては休憩し、また1時間半演奏・・・というのを夕方4時くらいまで繰り返していました。
一通りクラシックを弾いた後、中村由利子の曲を数曲弾いたのですが、ガーナ人のお客様方には『ウィスパリング・アイズ』という曲が好評なようでした。 イスラエル人のビジネスマンは、サティの『ジムノペディ』が好きだとおっしゃっていました。 また、バーの奥でコンピューターを開いて、ずっとお仕事されていた英国人ビジネスマンは、ショパンの『ノクターン』がお好きなのか、『ノクターン』を演奏する度に嬉しそうに拍手下さいました。
そう、今回は、ピアノ・バー、結構混んでいたのです。
朝食後の最初の演奏から夕方まで、ず~っとバーにいらしたお客様も何名かいらっしゃいました。
ホテルのピアニスト、(先述の)『ノクターン』がお好きなイギリス人ビジネスマンと、それから、どことなく気品をただよわせるガーナ人男性2人。
バーの従業員に
「これから同僚たちと昼食をとるのですが、食後にまた弾かせていただいてもいいですか?」
と尋ねていると、そのガーナ人男性2人の内の1人に
「是非また聴かせて頂きたいから、お食事が済んで、また演奏する時には、部屋番号○○まで電話で知らせてください。」
と頼まれました。 なんと光栄なことでしょう!
昼食後、ピアノ・バーに戻ると、『ノクターン』がお好きなイギリス人ビジネスマンが、バーの奥で相変わらずお仕事なさっていました。
従業員に
「先程あちらにお掛けだった男性(=ガーナ人男性)に、またピアノを弾く時に電話で知らせて欲しいと頼まれたのですが・・・」
と伝えると、こちらが部屋番号を伝える前にちゃんと○○号室に電話をかけて下さいました。 ホテルの常連さんなのかしら・・・?
早速お部屋から降りて来て下さり、数曲(イギリス人ビジネスマンの為にもちろん『ノクターン』も)演奏しました。
演奏後、そのガーナ人男性が紅茶をご馳走して下さり(←お酒を勧められたのですが、乗務前10時間をきっていましたので、丁重にお断りしました)、お話を伺うと、その方は、在フランスガーナ大使でした。
(↑だからホテルの従業員は彼の部屋番号を知っていたのですね・・・)
「是非パリに来て、ピアノを演奏してもらいたい。」
とおっしゃって下さったのですが、ヨーロッパ路線はもう乗務していませんし、乗務と関係なくパリへ行くとなると子供達のこともあってとても無理そうです・・・残念!
そうお話しすると
「お子さん達も是非ご一緒にパリへいらして下さい。」
と名刺を下さいました。 本当になんて光栄なこと!
「お見送りに降りますから、ご出発前にまたご連絡下さい。」
とおっしゃるガーナ大使に深くお礼申し上げ、
ピアニストには
「出発前にご挨拶に伺います」
と申し上げて、仮眠を取る為に部屋に戻りました。
出発前、演奏中のピアニストに
「またお会いできますように!」
とご挨拶すると、それまで弾いていたジャズを、クラシック曲のジャズ・アレンジにかえて弾いて下さいました。
エルガーの『愛の挨拶』・・・とても好きな曲です♡
ガーナ大使も見送りに降りて来て下さいました。
それだけで感動でしたのに、クルー・バスに乗り込む直前に、ピアニストがホテルの外まで走って来て
「今度いらっしゃった時には、是非、私のコンサートを聴きにいらして下さい。
あなたはコンサート・ピアニストになるべきです。
いろいろな人の演奏を聴いてきましたが、アマチュアであなた程印象的な音を出す人に会ったことがありません。
またあなたの演奏を聴けるのを楽しみにしています。」
と・・・! そしてバスが出るまで手を振ってお見送りして下さいました。
(もちろん私の演奏技術では、コンサート・ピアニストになどなれないことはわかっていますが)プロのピアニストの方からそんな風におっしゃっていただけるなんて、本当に本当に光栄なことです・・・(>_<。。。(←うれし涙)
あぁ、もっともっと練習に励まなければ!!
(フライト日記がすっかりピアノ日記になってしまいました・・・(^^ゞ)
次のフライトは、未定です・・・9月13日まで夏の休暇、そして休暇明けは、14~18日の5日間、スタンバイがついています。
どの便に呼ばれるのか楽しみです・・・日本路線であることを密かに祈りつつ・・・(笑)
(パイロットのお食事に
紙ナプキンのバラを添えてみました)
(お食事を下げに行ったら、
紙ナプキンのバラが、ちゃんと飾ってありました)
こんにちはー。なんだか、読んでいてすごくおもしろいです。
いろんなお仕事があるけれど、やはり、キャビンアテンダントさんって
素敵。。。と、想像をしてしまいました。
コックピットに一度でいいからのってみたい~~~
毎日、すごく狭い範囲でしか行動していない私にとって
世界中を飛び回るお仕事って、永遠のあこがれだなぁ。。。
大変かと思いますが、ファイト!
>ショコラ果歩さん
きっとどんな仕事もそれぞれ面白いこと、大変なことがあるのだと思いますが、CAの仕事で私が一番魅力を感じているのは、
食事です・・・というのは冗談で(笑)、いろいろな人との出会いです。
オランダ人の同僚達、日本の同僚達、機内のお客様、滞在先のホテルの従業員・・・気にしなければ話もせずに通り過ぎてしまうような人々も大勢いますが、話す機会があった時には、思い切ってお話してみることで新しいことを学んだり、新しい世界に足を踏み入れることができたり・・・。 反対に、私がお話したことから、新しい何かを発見する方もいらっしゃることでしょう。
常に好奇心と向上心を持って、これからもいろいろな人との出会いを楽しんでいきたいと思っています。
これはきっと、わざわざ世界中を飛び回らなくても、できることなのではないかと思いますヨ。 買い物や外食した時のお店の人とか、タクシーの運転手さん、電車の検札官とも、機会があれば私はいろいろお話しますよ(←変???) 面白いお話を伺えること、多いです♪
コックピットですが、(離着陸時は無理かと思いますが、通常の航行中でしたら)機長の許可があれば入ることができます。
いつか、機内でご一緒できることがあれば、機長の許可をいただいて、コックピットご案内しますネ。
やはりあるんですね~ドアが開かなくなることって!実は私も経験してます(*^。^*) 北京か上海か忘れましたが中国系の航空会社でした。鍵OPENNにしてるのにドアが開かない・・・あわてました~。コールボタンを押してCAが来られるの待ちました!来られたのはいいんですが中国語で言われてもわからない~。仕方ないので日本語で『出られない!』って叫びました(#^.^#) 今度は英語で話していただけたんで、事情説明すると『落ち着いて待ってて』って言われ待ってると、ドアを何かで叩く音がして、すぐに開きました、外にでるとCAさん何か手に持ってらっしゃったんですが・・・時間的には10分位だったんですが、すご~く長く感じました!
一生のあの飛行機のトイレの中で生活しなければいけないかと思いました(*^。^*)
ブログで流れてるピアノはmisaeさんが弾かれてるもですか?心安らぎます。イライラする時にブログにアクセスして10分位聞くと落ち着いてきます。鎮静効果あるのかな・・・
MISAEさん 10年前の音色を覚えていらしたなんて!!! ピアニストとの素敵な再会されたのですね・・・私も機会があれば是非MISAEさんの演奏聴いてみたいです♪ 素晴らしい方々との出会い、、私もオランダに来て日々勉強させていただいています。。ほんの小さな発見に幸せを感じている今日この頃、出会いを大切にしたいと。今月は大好きなピアニストのひとり、Martha Argerichさんのコンサートがコンセルトへボーでありま~す、、うふふ、楽しみです♪
MISAEさん ごめんなさーい、パソコンの不具合で同じコメントが4通も送信してしまって・・・ブログを読まれる皆様、たいへん失礼しました・・・
KLMの事を調べていたらこちらのBlogに辿り着きました。素敵なピアノ音色でひきこまれました。misae様が演奏されていらっしゃるのですか?
オランダは素敵なところです。20代中ごろに一人でアムステルダムに旅行にいったとき、バックパッカーの小さな東洋人の私にたくさんのオランダの方が
親切にしてくださったとても印象の深い土地でもあります。これからもこちらにお邪魔させていただきますね。
↓下記コメントを残させていただいたものです。
こちらの形式にコメントするのが初めてで、名前がのっていませんでしたね。「とも」と申します。
今度はきちんと名前が表示されるといいけど。。。
>miyoさん
まぁ! miyoさんもドアが開かなくなったことが?!
外に出た時にCAが手に持っていたもの・・・斧だったかもしれませんネ(笑)
ブログのBGMは私が弾いているのではないのですが、お気に入りの1曲です。 フライト先などで、暗譜で弾く時に最初に弾くのがこの曲。
ガブリエル・フォーレというフランスの作曲家の『シシリエンヌ』という、もともとはチェロとピアノ用に作曲された曲です。
夫がいない日には、子供達が寝る時にピアノを弾くのですが、この曲を弾くと子供達も落ち着くのか、すぐに眠ってしまいます。
(実は、弾いている私も、弾きながら眠くなることが・・・笑)
>shuさん
今回のピアニストとの再開は、私も本当にビックリしました。 出会いって素敵だなぁと思います。
接客業をしている方々がよく「好きな言葉は"一期一会"」とおっしゃいます。 とても良い言葉だと思いますが、私は「これが最初で最後だと思って心を込めてサービスする」のではなく、「いつかまたお目にかかれることを楽しみに、心を込めてサービスしている」ので、この言葉は合いません。
人生で出会える人は限られています。 全ての出会いを大切に、再会を楽しみに、生きていきたいです。
Martha Argerichさんのコンサートに行かれるのですか!! 羨ましい~~~!! 楽しんでいらして下さいネ。
(私は門限が22時なので行けないのデス・・・(T_T))
追伸: 同じコメントをいくつも送信してしまう・・・私もよくやります(^^ゞ 1つだけ残して削除しておきますのでご安心を!
>ともさん
コメントありがとうございました!
素敵な曲でしょう? ここで流れているのは私の演奏ではありませんが、ピアノを弾く時には必ず弾く、お気に入りの曲です。
オランダ・・・そうですネ、人が素敵な国だと思います。 日本とは違った(・・・というか日本とは正反対の)良さがあります。
是非また遊びにいらして下さい!