ピアニスト Wibi Soerjadi と連弾

ニューヨーク便から戻った翌日、Inflight Services部(←客室乗務員が所属する部署)のパーティーがありました。

オランダのテレビで有名な歌手&コメディアンのPaul de Leeuwという方を司会にお招きした、かなり盛大なパーティー。
先月から社内でも大々的に宣伝をしていて、
ブリーフィングの時に毎回全員で見ることになっているキャビン・ジャーナル(=機内サービスのニュースなどを放映する短いビデオ)でも、
Paul de Leeuw本人が登場するこのパーティーの宣伝が流れていました。
Paulは男性ですが、CAのユニフォームを着て女装していました・・・笑)
パーティーに出席する人は「Wens(=Wish=希望)」を一つすることができます。
先月初めにアクラ便で一緒だったオランダ人同僚達のアイデアで、私も
Wibi Soerjadiと連弾がしたい」
というWensをしてみました。

Wibi Soerjadi
は、インドネシア系オランダ人のピアニストです。
1989年にオランダで開催された国際フランツ・リスト・ピアノコンクールで3位になり、
1996年にニューヨークのカーネギー・ホールでデビュー・リサイタルを開いています。
コンセルト・ヘボー(←世界三大コンサート・ホールの一つ)でのクリスマス・コンサートのチケットが毎年早々売切れる、
オランダではとっても有名なピアニストなのです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Wibi_Soerjadi (ウィキペディア・英語)
http://www.soerjadi.com/index2.php (本人のサイト・英語とオランダ語)
パーティーは今日9月17日と10月1日の二日間(→恐らく、フライトのスケジュールが合わない人もいるので、それで二日間に分けたと思われます)。
私は9月は14~18日がスタンバイ(=自宅待機)になっていたので、10月1日の方に出席希望を出していました。それが、先週、急にクルー・コントロールから電話があり(→スタンバイの時や急なスケジュール・チェンジの時にここから電話がきます)、
「会社から、9月17日のパーティーに出られるようにスケジュールを組んで欲しいという要請があったので、スタンバイを解除しました。」
と言われ、それでニューヨーク便に乗務したのですが・・・これって、もしかして、Wibiと連弾できるってこと??

クルー・コントロールからの電話の後すぐに会社から
「10月1日出席希望となっていますが、9月17日にも来て下さい。」
という電話があったので、
Wibiと連弾できるのですか??」
と試しに聞いてみましたが、未定とのこと。
でも
「連弾の楽譜は持ってきて下さい。」
と言われたので、かなり期待して出席しました (*⌒―⌒*)
パーティー会場は、何千人ものオランダ人同僚達でいっぱい。

結構みんなジーンズ姿で、全然着飾っていなくて、オランダ人らしい(笑)

受付には空港と同じセキュリティーのお兄さん達が立っていて、会社のIDをチェック。 IDを忘れた人は入れません。
クロークに上着を預け、会場の中へ入ると、そこは、広々としたカクテル・ラウンジ。
ウェルカム・ドリンクがサービスされ、私はワイン(ロゼ)をいただきました。

白を基調としたモダン&シンプルなインテリアのラウンジには、あちらこちらに(白と緑のシンプルなアレンジの)花とキャンドルが飾られ、ゴージャスな雰囲気。
しばらくお酒と歓談を楽しんだ後、アナウンスが入り、会場の奥に開設された特別スタジオへ。主催者であるInflight Services部の新部長の挨拶の後、司会者のPaul de Leeuw機長のユニフォームを着て登場。
(でもよく見ると、機長のユニフォームはジャケットだけで、したはジーパン)
ユーモアたっぷりの挨拶の後、希望を出した同僚達が一人一人舞台の上に呼ばれては、それぞれの希望が叶う Ster
・・・のですが、結構おふざけものが多く、例えば、

「フランス語を習得したい。」というスチュワードに対しては・・・

Beau (Noël) van Erven Dorens (=『Deal or no deal』という人気番組の司会者)が
(名前がフランス語だからという理由だけで)フランス語教師として(こちらも機長のユニフォーム姿で)登場し、
Paulと二人でめちゃくちゃなフランス語を話した後、そのスチュワードと一緒に舞台裏へ行って、
スチュワードを(ボーダー柄のシャツにベレー帽、黒ぶちメガネに口髭、背中にしょったリュックにはフランスパン、という)フランス人風に変装させ、
フランス語で『ミスター・サマータイム』をカラオケで歌わせたり・・・Muzieknoot
入社して1年半、「未だに社内メールが来ない。」と嘆く同僚には・・・
彼女の部署と名前が宛名に既に印刷されたハガキを500枚、会場にいる人に配り、
会場内に設置されたポストに投函するように頼んで、2日後に彼女の元に500通のハガキが届くようにしたり・・・E-mail
「彼氏が欲しい。」という50代(!)のパーサーには・・・
即席ブラインド・デートと称して、舞台の脇に飛行機の客室を模倣したセットを作り、
パイロットのユニフォームを着た30~60代の男性を10名座らせ、
その中から好みの男性を選ばせたり・・・
そんな中で、唯一真面目だったのが私の
Wibi Soerjadiと連弾がしたい ♪」
という希望。
名前を呼ばれて舞台に上がると、
「何歳からピアノを弾いてるの?」とPaul(以下P)
私「5歳からです。」
P「え~っと今13歳だから8年間(笑)」と会場を笑わし、
(他にもいろいろギャクを言っていたようなのですが、早口でわからず・・・愛想笑いしてました・・・(^^ゞ)

P「Wibiとピアノを弾きたいという希望だよね。 残念ながら今日はWibiは忙しくて来られなかったんだけど・・・
なんちゃって~! 来てますヨ~! Wibi Soerjadi!!」

Wibi(いつものスーツ姿で)登場!!
本当に来てもらえたら感動して泣く予定だったのですが(笑)、時差ボケで(いつにも増して)ボ~っとしてたせいか涙は出ず・・・(^_^;)
P「じゃ、まずは最初に何か弾いてみて。 Wibiもmisaeの演奏を聞いてみたいでしょ?」
頷くWibi

ぎゃぼ~~~~~( ̄_ ̄|||) (←心の中の声)

これは予定外・・・(滝汗)
てっきり連弾だけするのかと思っていたので、Wibiにどの曲を指定されても大丈夫なように、
先週から、
ブラームスの『ハンガリー舞曲』、ドヴォルザークの『スラブ舞曲』、バッハの『主よ人の望みの喜びよ』、ドビュッシーの『小組曲』、ラヴェルの『亡き王女の為のパヴァーヌ』、モーツアルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』、シューベルトの『ファンタジー』
などなど、過去に弾いた連弾曲ほぼ全曲=その日持参した連弾譜全曲を練習するのに手一杯で、
ソロの曲は全く練習していなかったのに・・・
私「・・・で、では、日本の作曲家の曲を弾きマス!」
会場の誰も知らない曲を弾いて誤魔化すことに・・・(笑)

中村由利子の曲の中から、暗譜で弾ける『Whispering Eyes』・・・最初の1音を出した瞬間、あまりに大きな音にビックリ。
ピアノの真横にもスピーカーがあって、そこからガンガン大きな音が聞こえてくるのですxxx
気にしない、気にしない、と暗示をかけても、ちょこっとしたトチリも隣のスピーカーからバーンと大音量で聞こえてくるので、どうしても気になって、気になると集中力が欠け、集中力が欠けるとトチリ・・・の悪循環で、かなりボロボロでした・・・(T_T)

私「いっぱい間違えちゃいました。 すみませんxxx」
P「憧れのWibiが傍で聞いてるんだから緊張して当たり前だよ。 で、Wibi(以下W)、どうだった?」
W「心がこもっていて、音楽への愛情が感じられたよ。それが一番大事だからね!」

(無理に褒めてくれたんだろうなぁ・・・ありがとネ、Wibi♡)

いえ、マジでボロボロだったのです・・・ちゃんとソロ曲も練習しとけばよかった・・・(>_<。。。
・・・でも、後からいろいろな人に

「最初に弾いた日本の曲がすごくよかった! もう一度、作曲家の名前を教えて!」
と言われたので、どうやら会場の人々には間違いはそれ程目立たなかったらしい・・・ε-(^-^;)ホッ
そしていよいよ連弾。
Wibiが選んだのは、エルガーの『愛の挨拶』
P「すぐ弾ける?」
W「じゃ、ちょっとだけ目を通させて」
10分ほど時間を貰って(別のオランダ人同僚の希望が叶えられている間に)
最初から最後まで(少し音を落として)通してみました。
セコンド(ピアノの左側に座り、低音部を演奏する=私)の前奏に続いて、Wibiがメロディーを弾き始めると・・・
はぁ~ぴかぴか(新しい)素敵ぴかぴか(新しい) やっぱりプロのピアノの音は違う・・・目がハート
彼のピアノの音に聞き惚れながら弾いていると、時々
「いいね!」
とか
「そうそう!」
とか褒めて下さって・・・感激・・・(。♋ฺ‸♋ฺ。)うるるる
弾き終えてから
W「普通、初めて連弾するとバラバラになりがちだけど、
  君はとてもよく僕の音を聞いて、
  すごくよく合わせてくれてるから、これで良さそうだよ。
  ピアノのレッスンは受けてるの?」
私「はい。 連弾のレッスンを。」
W「いつからピアノ弾いてるの?」
私「3歳でオルガンを始めて、ピアノは5歳からです。」
W「どんな曲を弾いてるの?」
私「ショパンが好きです。
  あとはフォーレやドビュッシーなどのフランスの作曲家が好きです。
  (弾けるかどうかは別としてxxx)」
W「さっき弾いた日本の曲もドビュッシーっぽかったよね!」
私「本当はリストも好きなのですが、強い音を出すのが苦手で・・・」
W「強い音を出すのは簡単なんだよ。
  弱い音をきれいに出せるんだから大丈夫。
  反対に、強い音でガンガン弾いている人には、
  なかなか弱い音をきれいに出せないんだよ。
  リストはどんな曲を弾いたの?」
私「え~と・・・日本語の曲名はわかるのだけど・・・
  フランス語の曲名が思い出せない・・・(^^ゞ」
W「弾いてみて」
私(初めの部分を弾く)
W「あぁ『愛の夢』だね!
  この曲は、左手と右手でこんな風にきれいにメロディーをつなげて・・・
  (弾きながら解説)
  中間部のここ(サラリと弾きながら)も美しいよね!」
私「おぉぉぉ~~~ぴかぴか(新しい)
プロの演奏を真横で見られて感動~ぴかぴか(新しい)

W「力は抜けてる?」
おもむろに右腕を取られ(彼は私の右側に座ってましたので)、
持ち上げては離す、というのをくり返される・・・

左腕は脱力できているのに右腕はできてないらしい・・・
痺れのせい・・・?
あるいはWibiが右側に座っていたせい・・・?W「手首の力は抜けてる? さっきの日本の曲弾いてみて」
私(さっき弾いた中村由利子の曲の最初の部分を弾く)
W「そうそう。 いいね。 力が抜けていると、音楽の中に入っていきやすいよ。
音楽の中に溶け込んで音楽と一体になれると気持ちいいよね!
じゃあ、もう1回、連弾合わせてみようか♪」

いろいろアドバイスをいただきながら、もう一度練習して、本番。
シーンと静まり返る会場。
とにかく彼の弾くプリモの音色が美しくて・・・目がハート
聞き惚れて(←弾いてる最中に聞き惚れてちゃいけなかったのですがxxx)
気が散ったせいでミスった私の音でさえ、
彼の美しい音色のお陰で完全にカバーされた・・・という感じでした。
盛大な拍手の中、楽譜を譜面台から取ったら
後ろに置いてあった別の楽譜(Paul専属のピアニストの楽譜)を床に落としてしまい、
それを拾ったりしてもたもたしている私の左手を持つWibi・・・
一緒にピアノの前に進み、つないだ手をあげては一緒にお辞儀、手をあげてはお辞儀、
という、コンサートでよく見かける光景をあのWibiと一緒に!!ぴかぴか(新しい)最後にWibiと握手をして深くお礼をし、
(オランダ風に抱きついて頬に Rode lippen してしまっても、きっと全く構わなかったんだと思いますが、
夫の手前、やっぱりできませんでしたw)
私は客席へ。
Wibiは(翌日コンサートがあった為)帰宅。

パーティーの第1部が終わり、カクテル・ラウンジに戻ると、飲み物と軽食が出されました。
スタジオを後にする時、Wibiから預かったというCDを、スタッフが持って来てくれました。

『All-Time Classics』というCDです。
バッハ、モーツアルト、シューベルト、ショパン、リスト、ラヴェルの名曲と、
彼自身が作曲した曲が数曲収録されている、とても素敵なCD・・・(。♋ฺ‸♋ฺ。)うるるるラウンジでは、通りかかる同僚達に次々
「素晴らしかったわ!」
と声をかけられ嬉し恥ずかしでした。
Wibiと連弾できるなんて、さぞかし緊張したでしょう???」
と聞かれ
「ええ、それはもう、すごく緊張しました!!!」
と答えてましたが、実は全く緊張していませんでしたxxx

アメリカ路線から戻った翌日はいつも丸一日脳が思考機能を停止しているので、
あの日も実は一日ボケ~~~っとしていて・・・zzz
舞台に上がった時も全然ドキドキせず、あのかの有名なPaul de Leeuwともまるで友達のように接し、
(何を言われていたかはほとんどわかっていませんでしたがw)
Wibiが登場した時も(いつもブリーフィングで同僚とするみたいに)普通に握手して挨拶して、
急にソロ曲を弾けと言われて中村由利子の曲を弾いた時も手も足も全く震えていなくて・・・
(散々ミスりましたが(^_^;)
時差ボケと疲れで、最初から夢ののようだったので、
Wibiと競演したあののような出来事も、
夢の中の夢(?)のような感じでした。

彼の音を隣で聴いて、彼の弾き方を隣で見て、
本当にものすごく勉強になりました。

いろいろアドバイスもいただいて・・・(>_<。。。 (←嬉し泣き)
一生の思い出です・・・!!!Rode roos

ピアニスト Wibi Soerjadi と連弾」への3件のフィードバック

  1. おはようございまーす。
    すごい!!!
     
    願いを叶えてくれる企画が超うらやましいー。
    でも、ちゃんと一緒に連弾できるように練習していった
    かいがありましたね!!
    それにしても、憧れの人と一緒に連弾なんて・・・
    さらに、その前後の人たちが、おふざけっぽいのりだったから
    なおさら、本人が出てきてテンションあがったと思います。
    読んでいて私までテンションあがったし。(笑
    一生の思い出になりますね! 

  2. >ショコラ果歩さん
    こんばんは! 
    これは、オランダでは本当にすごい事なんです!!
    Wibi Soerjadi は本当に大人気ピアニストなんですヨ~♪
    私がアマチュアだったからこそ実現したとも言えマス・・・(^^ゞ
    パーティーの後も、ず~っと時差ボケが取れないまま、ワシントンへ乗務し、昨日戻りました。
    明日からフライト日記書き始めます(←書き上げるのに、いつも3~4日かかるのデス(^-^;)。
     
     
     

  3. ピンバック: ヨーロッパ路線 その2 |         オランダより愛を込めて ♡ 

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