ニューヨーク便から戻った翌日、Inflight Services部(←客室乗務員が所属する部署)のパーティーがありました。
ブリーフィングの時に毎回全員で見ることになっているキャビン・ジャーナル(=機内サービスのニュースなどを放映する短いビデオ)でも、
Paul de Leeuw本人が登場するこのパーティーの宣伝が流れていました。
(Paulは男性ですが、CAのユニフォームを着て女装していました・・・笑)
先月初めにアクラ便で一緒だったオランダ人同僚達のアイデアで、私も
「Wibi Soerjadiと連弾がしたい」
というWensをしてみました。
Wibi Soerjadiは、インドネシア系オランダ人のピアニストです。
1996年にニューヨークのカーネギー・ホールでデビュー・リサイタルを開いています。
オランダではとっても有名なピアニストなのです。
http://www.soerjadi.com/index2.php (本人のサイト・英語とオランダ語)
私は9月は14~18日がスタンバイ(=自宅待機)になっていたので、10月1日の方に出席希望を出していました。それが、先週、急にクルー・コントロールから電話があり(→スタンバイの時や急なスケジュール・チェンジの時にここから電話がきます)、
「会社から、9月17日のパーティーに出られるようにスケジュールを組んで欲しいという要請があったので、スタンバイを解除しました。」
と言われ、それでニューヨーク便に乗務したのですが・・・これって、もしかして、Wibiと連弾できるってこと??
「10月1日出席希望となっていますが、9月17日にも来て下さい。」
という電話があったので、
「Wibiと連弾できるのですか??」
と試しに聞いてみましたが、未定とのこと。
でも
「連弾の楽譜は持ってきて下さい。」
と言われたので、かなり期待して出席しました (*⌒―⌒*)
結構みんなジーンズ姿で、全然着飾っていなくて、オランダ人らしい(笑)
受付には空港と同じセキュリティーのお兄さん達が立っていて、会社のIDをチェック。 IDを忘れた人は入れません。
クロークに上着を預け、会場の中へ入ると、そこは、広々としたカクテル・ラウンジ。
ウェルカム・ドリンクがサービスされ、私はワイン(ロゼ)をいただきました。
白を基調としたモダン&シンプルなインテリアのラウンジには、あちらこちらに(白と緑のシンプルなアレンジの)花とキャンドルが飾られ、ゴージャスな雰囲気。
しばらくお酒と歓談を楽しんだ後、アナウンスが入り、会場の奥に開設された特別スタジオへ。主催者であるInflight Services部の新部長の挨拶の後、司会者のPaul de Leeuwが機長のユニフォームを着て登場。
(でもよく見ると、機長のユニフォームはジャケットだけで、したはジーパン)
ユーモアたっぷりの挨拶の後、希望を出した同僚達が一人一人舞台の上に呼ばれては、それぞれの希望が叶う
・・・のですが、結構おふざけものが多く、例えば、
「フランス語を習得したい。」というスチュワードに対しては・・・
(名前がフランス語だからという理由だけで)フランス語教師として(こちらも機長のユニフォーム姿で)登場し、
Paulと二人でめちゃくちゃなフランス語を話した後、そのスチュワードと一緒に舞台裏へ行って、
スチュワードを(ボーダー柄のシャツにベレー帽、黒ぶちメガネに口髭、背中にしょったリュックにはフランスパン、という)フランス人風に変装させ、
フランス語で『ミスター・サマータイム』をカラオケで歌わせたり・・・

会場内に設置されたポストに投函するように頼んで、2日後に彼女の元に500通のハガキが届くようにしたり・・・

パイロットのユニフォームを着た30~60代の男性を10名座らせ、
その中から好みの男性を選ばせたり・・・
「Wibi Soerjadiと連弾がしたい ♪」
という希望。
「何歳からピアノを弾いてるの?」とPaul(以下P)
私「5歳からです。」
P「え~っと今13歳だから8年間(笑)」と会場を笑わし、
(他にもいろいろギャクを言っていたようなのですが、早口でわからず・・・愛想笑いしてました・・・(^^ゞ)
P「Wibiとピアノを弾きたいという希望だよね。 残念ながら今日はWibiは忙しくて来られなかったんだけど・・・
なんちゃって~! 来てますヨ~! Wibi Soerjadi!!」
本当に来てもらえたら感動して泣く予定だったのですが(笑)、時差ボケで(いつにも増して)ボ~っとしてたせいか涙は出ず・・・(^_^;)
頷くWibi。
ぎゃぼ~~~~~( ̄_ ̄|||) (←心の中の声)
ブラームスの『ハンガリー舞曲』、ドヴォルザークの『スラブ舞曲』、バッハの『主よ人の望みの喜びよ』、ドビュッシーの『小組曲』、ラヴェルの『亡き王女の為のパヴァーヌ』、モーツアルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』、シューベルトの『ファンタジー』
会場の誰も知らない曲を弾いて誤魔化すことに・・・(笑)
中村由利子の曲の中から、暗譜で弾ける『Whispering Eyes』・・・最初の1音を出した瞬間、あまりに大きな音にビックリ。
ピアノの真横にもスピーカーがあって、そこからガンガン大きな音が聞こえてくるのですxxx
気にしない、気にしない、と暗示をかけても、ちょこっとしたトチリも隣のスピーカーからバーンと大音量で聞こえてくるので、どうしても気になって、気になると集中力が欠け、集中力が欠けるとトチリ・・・の悪循環で、かなりボロボロでした・・・(T_T)
私「いっぱい間違えちゃいました。 すみませんxxx」
P「憧れのWibiが傍で聞いてるんだから緊張して当たり前だよ。 で、Wibi(以下W)、どうだった?」
W「心がこもっていて、音楽への愛情が感じられたよ。それが一番大事だからね!」
(無理に褒めてくれたんだろうなぁ・・・ありがとネ、Wibi♡)
いえ、マジでボロボロだったのです・・・ちゃんとソロ曲も練習しとけばよかった・・・(>_<。。。
・・・でも、後からいろいろな人に
Wibiが選んだのは、エルガーの『愛の挨拶』。
W「じゃ、ちょっとだけ目を通させて」



彼のピアノの音に聞き惚れながら弾いていると、時々
W「普通、初めて連弾するとバラバラになりがちだけど、
私「はい。 連弾のレッスンを。」
W「いつからピアノ弾いてるの?」
私「3歳でオルガンを始めて、ピアノは5歳からです。」
W「どんな曲を弾いてるの?」
私「ショパンが好きです。
W「さっき弾いた日本の曲もドビュッシーっぽかったよね!」
私「本当はリストも好きなのですが、強い音を出すのが苦手で・・・」
W「強い音を出すのは簡単なんだよ。
私「え~と・・・日本語の曲名はわかるのだけど・・・
W「弾いてみて」
私(初めの部分を弾く)
W「あぁ『愛の夢』だね!
私「おぉぉぉ~~~

プロの演奏を真横で見られて感動~

W「力は抜けてる?」
おもむろに右腕を取られ(彼は私の右側に座ってましたので)、
持ち上げては離す、というのをくり返される・・・
あるいはWibiが右側に座っていたせい・・・?W「手首の力は抜けてる? さっきの日本の曲弾いてみて」
私(さっき弾いた中村由利子の曲の最初の部分を弾く)
W「そうそう。 いいね。 力が抜けていると、音楽の中に入っていきやすいよ。
音楽の中に溶け込んで音楽と一体になれると気持ちいいよね!
じゃあ、もう1回、連弾合わせてみようか♪」
シーンと静まり返る会場。

聞き惚れて(←弾いてる最中に聞き惚れてちゃいけなかったのですがxxx)
気が散ったせいでミスった私の音でさえ、
彼の美しい音色のお陰で完全にカバーされた・・・という感じでした。
後ろに置いてあった別の楽譜(Paul専属のピアニストの楽譜)を床に落としてしまい、
それを拾ったりしてもたもたしている私の左手を持つWibi・・・
一緒にピアノの前に進み、つないだ手をあげては一緒にお辞儀、手をあげてはお辞儀、
という、コンサートでよく見かける光景をあのWibiと一緒に!!

(オランダ風に抱きついて頬に

夫の手前、やっぱりできませんでしたw)
私は客席へ。
Wibiは(翌日コンサートがあった為)帰宅。
パーティーの第1部が終わり、カクテル・ラウンジに戻ると、飲み物と軽食が出されました。
スタジオを後にする時、Wibiから預かったというCDを、スタッフが持って来てくれました。
彼自身が作曲した曲が数曲収録されている、とても素敵なCD・・・(。♋ฺ‸♋ฺ。)うるるるラウンジでは、通りかかる同僚達に次々
「素晴らしかったわ!」
と声をかけられ嬉し恥ずかしでした。
「Wibiと連弾できるなんて、さぞかし緊張したでしょう???」
と聞かれ
「ええ、それはもう、すごく緊張しました!!!」
と答えてましたが、実は全く緊張していませんでしたxxx
アメリカ路線から戻った翌日はいつも丸一日脳が思考機能を停止しているので、
あの日も実は一日ボケ~~~っとしていて・・・zzz
舞台に上がった時も全然ドキドキせず、あのかの有名なPaul de Leeuwともまるで友達のように接し、
(何を言われていたかはほとんどわかっていませんでしたがw)
Wibiが登場した時も(いつもブリーフィングで同僚とするみたいに)普通に握手して挨拶して、
急にソロ曲を弾けと言われて中村由利子の曲を弾いた時も手も足も全く震えていなくて・・・
(散々ミスりましたが(^_^;)
時差ボケと疲れで、最初から夢の中のようだったので、
Wibiと競演したあの夢のような出来事も、
夢の中の夢(?)のような感じでした。
本当にものすごく勉強になりました。

おはようございまーす。
すごい!!!
願いを叶えてくれる企画が超うらやましいー。
でも、ちゃんと一緒に連弾できるように練習していった
かいがありましたね!!
それにしても、憧れの人と一緒に連弾なんて・・・
さらに、その前後の人たちが、おふざけっぽいのりだったから
なおさら、本人が出てきてテンションあがったと思います。
読んでいて私までテンションあがったし。(笑
一生の思い出になりますね!
>ショコラ果歩さん
こんばんは!
これは、オランダでは本当にすごい事なんです!!
Wibi Soerjadi は本当に大人気ピアニストなんですヨ~♪
私がアマチュアだったからこそ実現したとも言えマス・・・(^^ゞ
パーティーの後も、ず~っと時差ボケが取れないまま、ワシントンへ乗務し、昨日戻りました。
明日からフライト日記書き始めます(←書き上げるのに、いつも3~4日かかるのデス(^-^;)。
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