フライト日記 (Cairo)

2008年10月
(CAI)
 
カイロ便リポーティング・タイムは午後7時5分でしたが、
電車のダイヤの乱れに備えて、2時間余裕を持って午後5時には家を出発。
今回は電車も遅れずスムーズに空港に到着したので、アローワンス(=滞在中の食費等)を引き出したり、会社からの手紙を読んだり、ゆっくり乗務の準備をすることができました。
 
私達CAよりも30分リポーティングが早いパーサー達(=全体を仕切るシニア・パーサーと、エコノミークラスを仕切るジュニア・パーサー/アシスタント・パーサー)に挨拶しに、パーサー・ブリーフィング・ルーム(←全員で行うブリーフィングの前にパーサー達がCAのワーキング・ポジション(=誰がどのギャレーに入るかetc.)を決めたり、フライトの情報(=スペシャル・ミールの数の確認、車椅子のお客様の有無etc.)に関して打ち合わせをする部屋)へ行くと、
なぜかコックピット・クルーも勢揃いしていて・・・???
そこで、実はフライトが1時間ディレイしていることを知りました。
機体の一部に故障箇所が見つかったから、とのこと。
故障が見付かったのが遅かったので、クルーに連絡できなかったのだそう・・・
(ちょっと怪しい・・・イヤミ←単に連絡するのをはしょってしまっただけのような気も・・・)
 
修理が終わり次第出発するので、予定通りの時間でブリーフィングを済ませ、クルーセンター内で待機することに。
ブリーフィングにもコックピット・クルーが途中から参加し(→通常は、キャビン・クルーとコックピット・クルーは別々にブリーフィングします)、事情の説明がありました。
故障が見付かったのは、主翼のエンジンの1つの油圧系統。 パイプの交換が必要とのこと。
恐らくディレイは1時間では済まないだろう、という機長からの話でした。
 
午後7時30分過ぎにブリーフィングが終わってから、クルーセンター内で皆でコーヒーを飲みながら、最新情報を待ちました。
私もそうですが、夜中の乗務でリポーティング・タイムが夜であっても、子供がいれば普通に朝早く起きなければなりませんし、
同僚の中には、オランダ東部や南部、ベルギーなどから車を2時間くらい運転して出社してくる人もいるので、
(↑この日は道が混んでいなかったらしく、午後5時くらいからもう空港に来ていたという同僚もいました)
予想外のディレイが発生すると、結構大変です。
 
定刻だったら出発予定時間にあたる午後8時45分、機長から全員集合の指示が。
少し離れた所で立ち話をしていたパーサー達を、をならして呼んだ機長にみんなビックリ(笑)
ポケットにを常備しているらしい・・・(^^?
(つい最近ミハーリ・マリアと一緒に映画『サウンド・オブ・ミュージック』を観たばかりの私は、で子供達を呼んでいたトラップ大佐を思い出してしまいました)
 
機体の修理並びに作動テスト等の点検は無事終了し、機体はこれからハンガー(=航空機整備格納庫)を出、午後9時15分頃、出発ゲート到着予定とのことなので、
午後9時にクルーセンターを出てゲートに向かうことになりました。
 
しかし、ゲートに来てみたものの、飛行機の姿はなく・・・
地上職員の姿もなく・・・
 
機長がゲート前待合室内のお客様方に
「本日はご迷惑をお掛けして申し訳ありません。 まもなく機体が到着し、出発できる見込みですので、もうしばらくお待ち下さい。」
と(英語とオランダ語で)話しかけると
「なんで遅れてるんだ!!! 遅れている理由を説明しろ!!!」
と怒鳴る乗客の声が・・・
 
通常ならば出発予定時刻の1時間前から搭乗手続きを開始するはずなので、お客様方は1時間半くらい前の午後7時45分くらいからゲート前にお集まりだったはず・・・
地上職員から何の説明もなかったなんて・・・(-_-|||) 
というか地上職員、一人も来てないし・・・( ̄_ ̄|||)
 
機内でもそうですが、
どうしてもお客様をお待たせしなければならない状況で、
① 何の説明もせずにお待たせするのと、
② きちんと理由を説明してお待たせするのとでは、
お客様が受ける印象が全然違ってきます。
 
「機体に故障箇所が見付かって、安全に飛行する為に、修理+点検をしていたから出発が遅れているのだ」
という説明が地上職員からきちんとされていたなら、皆様こんなにはお怒りではなかったはず・・・(;-_-;)
 
飛行機も到着していないし、ゲート前に地上職員も警備員もいなかったので、私達は仕方なく待合室の手前で待機していたのですが、
エジプト人男性客が一人、
「明日結婚式なのに、飛行機が遅れて、本当に困っている!激怒 どうしてくれるんだ!」
とものすごい剣幕で怒鳴りかかってきました。
他にもお困りのお客様もいらっしゃったことでしょう・・・本当にお気の毒ですが、私達にはどうすることもできません。
 
機長が再びお客様方の前に歩み出て、遅延の理由を説明し始めると、皆様静かに聞き入っていました。
他の乗客達に
「うるさいぞ! シーッッッ!!」
と怒られて、明日挙式のエジプト人男性客も、黙って機長の説明を聞き始めました。
ベテラン機長のハンス・・・さすがだなぁと感心。
 
間もなく地上職員が到着。 
お客様に配るバウチャー(→空港内で無料で飲み物を飲めたり、電話をすることができるチケット)に、フライト・ナンバーと日付を記入する作業を手伝って欲しいと言われ、皆で記入。
もっと早くに配るべきだったのでは・・・?>地上職員
警備員によるクリア・エリア(=ゲート前での手荷物検査場の先にある待合室)のセキュリティー・チェックが済んだので、私達はクリア・エリアで引き続き待機することに。  
警備員の人達も、飛行機が到着して、搭乗前の乗客のセキュリティー・チェック(=手荷物検査+身体検査)が始まるまで、クリア・エリアで待機です。
 
なかなか飛行機が来ないので、待合室内でジュースとクッキーをお配りすることになり、
カップジュースとクッキーが入ったダンボール箱を抱えて皆で配った後、
(オートミールのクッキーが好評でした指でOK
「乗務の前から沢山歩き回ったので、消費カロリーが高そう=機内で沢山食べても大丈夫(笑)」
などと考えながら、ゴミを回収。
 
騒がしい声がするので見ると、先程私達に怒鳴りかかってきた明日挙式のエジプト人男性が、今度は機長ハンスに食いかかっていました。
「おっしゃりたいことはよくわかりますが、普通にお話していただけませんか?
 このまま攻撃的な態度を取り続けるのでしたら、乗務妨害にもなりかねませんので、飛行機にお乗せするわけにはいきません。」
とハンス。
「なんだと~!激怒 客にそんなこと言っていいのか!」
と憤るその男性。
「私は本日のカイロ便の機長です。 機長の私には、安全な飛行に支障があると思われる場合、乗客の搭乗を拒否する権限があります。
 5分待ちます。 5分後にまだ攻撃的な態度をお取りになるようでしたら、本日の便にはお乗せできませんのでご覚悟下さい。」
と冷静に、かつ、堂々と対応するハンス。
5分後・・・周りの乗客にもなだめられたのか大人しくなったその男性客、ハンスに謝り、笑顔で握手をかわしていました。
よかった・・・ε-(^。^;)ホッ
 
午後10時過ぎ、ようやく機体が到着。 機種はボーイング777-200型機です。
乗客から拍手が沸き起こりました(笑)
と同時にアナウンスが入り、乗客のセキュリティー・チェックが始まってしまったので、クリア・エリアを追い出されるように私達は機内へ・・・
(でも、ちょっと搭乗には早すぎるのでは・・・)
と不安に思っていたとおり、警備員による機内のセキュリティー・チェックも済んでいなかったし、ケータリング(=ミール・トローリードリンク・サービス・トローリーなどのトローリー類や、コーヒー/紅茶のコンテイナーやメニューカード・コンテイナーなどのコンテイナー類etc.)も何もまだ搭載されていなく・・・
警備員やケータリングの方々がスムーズに作業する為にも、私達はまだ機内には乗り込まない方がよかったと思うし、
→つまり搭乗準備が整うまでまだまだ時間がかかるので、
乗客のセキュリティー・チェックも(「すぐに出発できる!」という間違った期待をお客様方に持たせるだけなので)こんなに早くから始めなくてもよかったと思うのですが・・・
なんでも、乗客のセキュリティー・チェックを担当している警備員達のシフト終了時間が迫っていた為、残業しなくていいように、早過ぎるとはわかってはいたけれどセキュリティー・チェックを開始したんだそうです(←個人主義のオランダらしい・・・(^^ゞ)
 
担当はビジネスクラス。 満席です。
 
警備員によるセキュリティー・チェックが済んだ後、私達も自分が担当するエリアのセキュリティー・チェックをし、ようやく全て搭載された(でも、慌てて搭載したからか、ポジションが全然合ってないxxx)トローリーから、お客様にお配りするメニューやヘッドセット、アメニティー・キット等を用意し、ウェルカム・ドリンクの準備をします。
出発が遅れ、お客様もお疲れなので、早くお食事をお出しし、早くお休みいただけるよう、離陸前にお食事のチョイス(=今月は、ラム・チキン・お魚からのチョイス)をお伺いし、離陸後のドリンク・サービスはスキップしてすぐにミール・サービスを開始することに。
離陸したのは結局午後11時過ぎ。 
飛行中も機長が度々客室を回り、乗客の質問に答えたりしてくれたお陰で、
最終的にカイロ到着は定刻よりも2時間遅れてしまいましたが、
お客様がお降りになる際には
「とても良いサービスでした!」
と皆様にこやかにおっしゃって下さり嬉しかったです。
 
カイロの空港、またまた綺麗になっていました。 改装工事がまだ進められているようです。 
20年前のエキゾチックな空港の面影は、もうどこにもありません・・・なんだかちょっと寂しいような気もします。
 
空港の外に出ると、真っ暗な空の中、モスクのスピーカーから祈りの声が流れていました。 これがものすごい大音響で・・・(笑)
「こんな遅いのに、まだ祈ってるの?!」
という同僚に
「こんな早くから、もう祈ってるの?!・・・でしょ!」
と笑う別の同僚。 時間は午前5時半です。
 
クルーバスの中で、
「明日、一緒にピラミッド見学に行く人には、学校で習った歴史を覆す、驚くべき真実を話してあげます・・・ウインク
と機長のハンス。
エジプトに魅了され、プライベートでも何度も訪れているのだそう。
 
ピラミッドは何度行っても本当に素晴らしいのだけれど・・・
 
今回は、オランダに戻った日に、そのままアムステルダム日本語補習校へ行って
小学校1~2年生対象の読み聞かせ、小学校3年生の歌の伴奏のお手伝い、そしてその後、小学校3年生対象の読み聞かせ、放課後は先生方との面談・・・
という予定があったので、ホテルで大人しくしていようと思っていたのです。 が・・・
 
隣に座っていた、帰りの便の機長パウル(←カイロ便も、東京便ニューヨーク便同様に日によって使用機材が異なり、行きはボーイング777、帰りはボーイング747となっていたので、帰りの便=ボーイング747のコックピット・クルーがDeadHeading Crewで、目的から出発する便に乗務するクルーとして乗っていたのです)が
「misaeも一緒に行こうよ、行こうよ~!
・・・ハンス!misaeも一緒に行くって!」
 
クルーセンターで会った途端に
「misae!」
と呼びかけてきたパウル・・・今年41歳になる若いキャプテン。
札幌便で一緒だったと聞いてもなかなか思い出せなかったのですが、乗務が終わって家に帰ってきてから思い出しました。
11年前の札幌就航便に一緒に乗務した副操縦士のパウル!
オランダ人の同僚達にとっては初めての北海道・・・(私は母が北海道出身なので、子供の頃から何度も遊びに来ている懐かしい場所です)
皆を連れて札幌の街へ繰り出したり、支笏湖の温泉に行ったり、本当にそれはそれは楽しいステイだったことを思い出しました。
11年振りに再会したパウル、立派な機長になっていて、結婚して子供も二人、幸せそうでよかった!
(11年振りだったのに、顔も名前も覚えていてくれて感激(>_<。。。
・・・それに引き換え私はすっかり記憶喪失で、お恥ずかしい限りxxx)
 
という訳で、翌日(・・・といっても、ホテルに到着したのがもう"翌日"の午前6時過ぎでしたから、"後で"と言った方が正しいですがxxx)、
777機長のハンスをツアー・リーダーに、操縦士4人(=777のパイロット2人+747のパイロット2人)+CA3人で、ピラミッド見学に行くことになりました。
 
(つづく・・・)
 

フライト日記 (Cairo)」への2件のフィードバック

  1. ハンス機長って素晴らしい~、人格者なのですね?
    どんな場合もクレーム対応の基本は同じだと良く分かりました。
    販売業でのクレームも時間をいただく場合は納得のいく理由説明が不可欠ですし
    その後の経過報告も先方がイライラする前に随時知らせていかなければなりません。
    その際も言葉をちゃんと選びながら進めないと別のクレームが起きてしまうから要注意!
    misaeさん、今回のカイロ便のフライト本当にお疲れさまでした。
     
    次回のピラミッド見学のリポートを楽しみにしています(^^)

  2. >アヌークさん
     
    本当にそうですね。
    どんな職場でも、クレーム対応の基本は同じ。
    どんな場合でも、相手の立場に立って考えることができれば、自ずと最適な対処ができるのでしょうネ。
     
    今週は絶対に合格しなければならない試験があるので、今、試験勉強におわれていますxxx
    ピラミッドのお話は、もしかしたらニューヨークへの乗務から戻ってきてからになってしまうかもしれません・・・(^_^;)
    楽しみにして下さっているのにお待たせしてスミマセン・・・m(_ _)m

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