2006年6月 つづきのつづき
(BON)

(ホテルのビーチ・バーにもイグアナが・・・!)
(W杯のオランダ・チーム応援の為
=ボネールはオランダ領です
ホテルの各所に
オレンジ色の飾り付けがされていました)
(でも・・・昨日負けちゃったので
きっと今頃は取り外されていることでしょう・・・)
ボネールで2泊した後、3日目にリマへの往復乗務がありました。
(トラブルが起きるのは、リマからの帰路ですので、辛抱して読んで下さいネ!?)
Calling(クルーバスがホテルを出発する1時間前に、ウェイク・アップ・コールがあります)は午後1時50分。
朝食後しばらくホテルのビーチへ出(・・・2月、4月とボネール便が付き、もうすっかり日焼けして真っ黒だったので、今回は夕方まで部屋に篭っていようと思っていたのですが、あの美しい海を前にしたら、やっぱり勿体無くなってしまって・・・)、お昼頃部屋に戻って1時間ほど仮眠をとり、クルーバスで空港へ。
リマまでは飛行時間約3時間30分。
その間に、ドリンク・サービス、(前菜、主菜、デザートのフルコースの)ディナー・サービス、食後酒のサービスをします。
空港待合室でお待ちだったトランジットのお客様と、ボネールからご搭乗のお客様をお迎えし、いつもの様にウェルカム・ドリンク(シャンパン、フレッシュ・オレンジ・ジュース、ミネラル・ウォーターからお選びいただきます)をお出しし、イヤホン、コンフォート・バッグ(中にアイ・マスク、ソックス、歯磨きセット、リップ・クリームなどが入っています)、メニュー・カードをお配りします。
ふと気が付くと、本来、離陸して、ドリンク・サービスを終えてからお伺いするはずのディナーのチョイスを、相棒の(今回に限りビジネスクラスを担当することになったパーサーの)ヴィヴィアンが、いつのまにか取りに行っていました。 (相変わらずですxxx ま、いいんだけど・・・一言言ってくれるといいのになぁ・・・)
「一緒にやろうか?」と聞くと、「一人でできる」と言うので、私は離陸に備え、ギャレーの片付けをしていました。 すると、突然バタバタとヴィヴィアンが戻って来て、パーサー・ワーク・ステーション(MD-11ではビジネスクラスのギャレーの隣にある)にいるシニア・パーサーのアントワネットに「misaeが違うメニューを配った!」と訴え(・・・なんで私に言わずにシニア・パーサーに言うかなぁ・・・)、メニュー・コンテイナーの別のメニュー・カードを取り出そうとしています。 (メニュー・コンテイナーには、アムステルダムを出発する時点で、アムステルダム~ボネール、ボネール~リマ、リマ~ボネール、ボネール~アムステルダムの4種類のメニュー・カードが搭載されているのです。) 私もすぐに駆け寄って再確認(もちろんお配りする前に一度は確認済みですのでネ)すると・・・大丈夫、間違ってません。 (ヴィヴィアン、お願いしますよ~・・・)
チョイスを聞き終わると、ヴィヴィアンはオーブンの準備を始めました。 「もうすぐ離陸なのに、時間あるのかな・・・」と思いながらも、腕の4本線(=パーサー)を見るとやっぱりなんだか意見し辛い。 これが、いつもの通り、2本線(=ビジネスクラスCA)の相棒だったら、まず、離陸直前の時間のない時にオーブンの準備などしないでしょうし、しようとしたとしたら私も「離陸後にしましょうよ」と促したのですが・・・。
手伝っていると案の定、機長から「乗務員、着席」のアナウンスが。 慌てて片付けて、大急ぎでギャレーをチェックし、ジャンプ・シート(クルーが座る席)に。
離陸中、ギャレーで鈍い金属音がし、離陸後シートベルト着用のサインが消えてギャレーに戻ると、ウェイスト・トローリー(=ゴミ箱)が収納場所から飛び出していました。 離陸前のギャレー・チェックが不十分で、ロックし忘れていたのです。 当然シニア・パーサーのアントワネットからお叱りを受けました。 幸い、ウェイスト・トローリーはギャレー内に留まっていましたが、万が一、通路に飛び出し、客室内を後方へ滑走でもしていたら、大変なことになっていましたから。
離陸前はフライト・セイフティーにのみ集中しないと・・・反省
ボネール便では、アムステルダム~ボネール、ボネール~リマ往復、ボネール~アムステルダムで、コックピット・クルーが全て異なります。
ボネール~リマ往復便では、副操縦士のヘンクがヴィヴィアンの旧友(・・・というだけではない=フライト先での恋人という噂でしたが、ホントかな・・・)とのことで、サービスの合間、ヴィヴィアンが度々知らぬ間にコックピットへ遊びに行ってしまって困りました。 (せめて一言言ってから行ってくれ~)
そしてリマ到着30分前、コックピットから戻ったヴィヴィアンが、「着陸の時、コックピットに座っていいって言われたから、私、コックピットに行くわね!」と言う・・・MD-11には、客室内の非常用ドア8つに対し、(前の日記に書いたとおり)乗務員が10名搭乗している=担当ドアを持っていない乗務員が2名いる+リマ往復便は飛行時間が短い為、コックピットに4席クルー・シートがあるのに対し、パイロットは2名しか乗務していない=離着陸時に、客室乗務員2名まで、コックピットに座ることができるのです。
通常は、シニア・パーサーとパーサー(アシスタント・パーサー)は、緊急事態発生時に大切な任務があるので、客室に残らなければなりません。
でも、今回は、パーサーの資格を持った乗務員が(ユィックとヴィヴィアンの)2人いましたから、それにヴィヴィアンはパーサーとしてでなくビジネスクラス乗務員として乗っていましたから、彼女にとって、またとないチャンスだった訳です。 そのことがすぐに頭を過りましたので、私は「よかったネ~普段は無理だものネ~」と一緒に喜んでいたのですが・・・
その数分後、エコノミークラス担当のナタリーがコックピットから戻って来て、シニア・パーサーのアントワネットに「着陸の時、誰かコックピットに座っていいそうなので、くじ引きしていいかしら?」と聞いているのです。 (ヴィヴィアンと話が違う・・・???)
即座にヴィヴィアンが「もう私が座ることに決まってるのよ!」
ナタリーがビックリした顔で「でも、私、たった今コックピットで聞いてきたのよ?! 公平にくじ引きにしましょうよ」
「いいえ! 私が座っていいって言ってた!」そう言って、皆が唖然とする中、そのままコックピットへ行ってしまったヴィヴィアン。
ふと我に返った私・・・「えっ、ちょっと待って・・・こんなに早くコックピットに行かれちゃったら困る・・・着陸前の仕事がまだあるのに~」
ギャレーの片付け、お預かりした上着の返却、イヤホンの回収、客席の最終チェックetc.・・・ナタリーが手伝ってくれて何とか終えました。
リマ到着後、約1時間の停泊時間があったので、何人かで空港ターミナルへ。
(シニア・パーサーの言いつけどおり)搭乗開始の20分前に戻ると、ウェルカム・ドリンクの用意などが既にされてあったので、てっきりヴィヴィアンがやってくれたのかと思ったら、ヴィヴィアンは気分が悪くなってしまった為、シニア・パーサーのアントワネットが代わりに準備してくれたとのこと。 ありがたいなぁと思っていたら、エコノミークラス担当の子達曰く、「私が準備で忙しかったのに、みんな買い物なんかしてて!」と怒っていたらしい・・・お疲れなのかな、アントワネット。 現地の時間で午後9時過ぎ、オランダ時間で午前3時過ぎでしたから、時差ボケが残っていたりした場合、このリマ往復便は大変きついフライトなのです。
私はというと、ビジネスクラスで余った前菜&主菜(アムステルダム~ボネール間で既に2回お食事を出していますので、お腹一杯で召し上がらないお客様も多いのです)をいただき、満腹状態でしたので、元気ハツラツでした。
私は、十分に食べていれば、多少の寝不足は平気なのです。

(前菜のシーフード盛り合わせ)

(主菜のサーモンの照り焼き・・・なぜか和食)
(と~っても美味しかったです!)
ヴィヴィアンが働けない、というので、アントワネットがユィック(エコノミークラスを仕切っているパーサー)に「エコノミークラスから一人、ビジネスクラスのヘルプによこしてくれ」と頼んでいます。 ビジネスクラスの搭乗人数を聞くと20名とのこと。 それならボーイング747-400の1階ビジネスクラスの満席時の人数(18名)と2名しか変わりません。 「大丈夫、20名なら私一人でサービスできますヨ」と申し出ました。
でも、結局、お客様の搭乗開始時には、ヴィヴィアン、けろりとした顔で、アントワネットの隣でお客様をお迎えしていたので、私は内心「よかった~一人じゃやっぱり大変だもの・・・」と思いながら、エコノミークラス担当のエレアナと一緒に、反対側のドアの前で、お客様をお迎えしていました。
ほとんどのお客様がご搭乗なさった頃、ニコニコ顔のお客様が乗っていらっしゃいました。 北欧系の男性のお客様です。
入り口のところで、ヴィヴィアンととても親しそうに話していらしたので、「もしかしたら、アムステルダム~ボネール間に、彼女の担当エリアに座っていらしたお客様・・・??」とさえ思えたくらいでした。
そのお客様は、ドア前のお席(5B)にお掛けになりました。
しばらくして、そのお客様が、反対側の窓際のお席(5J)にお掛けのお客様に話しかけられました。 間に4席と通路もありますから、声も多少大きくなります。
アントワネットが「お静かに! まっすぐ前を向いてお座り下さい!」と大袈裟に厳しく注意しています。 疲れからか、かなりイライラしている様子でした。
私は、「その反対側の席のお客様がお知り合いでもなんでもなければ、確かに迷惑行為なので、確認してみよう」と思い、5Jにお掛けのお客様に聞いてみると、お二人はもう一人のビジネスクラス客と一緒に三人でご旅行中とのことで、三人とも席が離れてしまったとのこと。
その旨アントワネットに伝え、ビジネスクラスのお客様は既にお揃いでしたし、5Jの隣のお席(5H)がまだ空いていましたので、5Bのお客様を5Hにお移りいただいてはどうか、と話しました。 アントワネットも了解してくれたので、5Bのお客様を5Hにお連れし、様子をみていましたら、それからは普通の音量でお話されていました。
5HJのお席は、丁度私の担当エリアだったので、私が責任を持って担当しようと思っていました。
ところが、ギャレーに戻ると、アントワネットが「あのお客様(5Bから5Hに移したお客様)、どう思う? 降ろした方がいいと思う? 前に、迷惑行為をしていると勘違いして無実のお客様を降ろしてしまったことがあるから、同じ間違いを繰り返したくないから・・・」とヴィヴィアンに相談しているのです。
そして(あのお客様とあんなに親しそうに話していた)ヴィヴィアンが「私、あの人、嫌! 降ろして欲しい!」と言っているではありませんか・・・(驚)
「さっきも伝えたけど、大きな声で話していたのは、連れの方が離れていたからであって、隣同士になった今は全然問題ないわよ。」と私が言うと、ヴィヴィアンが「でも5Aのお客さんが、あの客は酔っ払ってるって言ってた! 私は嫌!」
・・・って、ヴィヴィアン、単に、自分の気分/機嫌が悪いだけなのでは・・・それに、ビジネスクラスのお客様ですよ~~~~~
「全然問題ない」と言った手前、きちんと様子を見てなくちゃ・・・と、離陸前の仕事(ウェルカム・ドリンクをお出ししたり、メニュー・カードやイヤホンをお配りしたり・・・)をしながらちょくちょく様子を伺い、ますます「これならホントに全然問題ない」と安心していると、アントワネットが急に機長を連れて来て、例のお客様に「あなたは機内で迷惑行為を行った為、飛行機からお降りいただきます」と言うではありませんか!!
連れのお二人のお客様と共に「どうしてですか?!」と繰り返す、例のお客様を立たせ、荷物入れから手荷物を降ろさせ、ドアへと連れて行ってしまいました。
ドアのところで「気を悪くしたのなら申し訳ない。 どうかお願いだから乗せていって欲しい」とひたすら謝るお客様・・・。 思わず機長のところへ駆け寄って「このお客様、大丈夫よ、降ろす必要ないヨ!」と伝えましたが、機長は「もう決定されたこと。 変更はしない。」と。
残された連れのお客様は当然憤慨されています。 担当の乗務員として、直ぐにお二人のところへ行って、機長とシニア・パーサーの決定は覆せない旨ご説明し、お詫び申し上げました。
それからシニア・パーサーのアントワネットのところへ行って、
「質問があるのだけどいい?
迷惑行為をした乗客を降ろす場合、シニア・パーサーと機長がそれを決定するのは承知してるけど、決定するに当たって、該当するお客様を担当していた乗務員の意見は汲んでもらえないの?」
と聞くと、
「でも、あの乗客は叫んでいたし、まっすぐ座るように注意しても聞かなかったから・・・」
とアントワネット。
「あの時、私も見ていたけど、あのお客様は確かに大きな声で話してはいたけれど、叫んではいなかったし、それはご友人が離れて座っていたせいで、席が隣同士になってからは問題なかったはず。 どうして決定前に、担当である私の意見を聞いてくれなかったの?」
「あなたはどういう意見だったの・・・(不安気に)?」
「今、聞かれても遅いけど、私は、問題ないと思った。 降ろす必要はないと思った。 自分が責任を持って担当できると思った。 それに、ボネールまではたったの3時間半。 万が一ダメなら、ボネールで降りてもらってもよかったはず。 ビジネスクラスのお客様なのよ? ドアのところで散々謝った時点で、搭乗を許可していたら、感謝100倍、きっとまたご利用して下さったに違いないのに、これではきっともうご利用下さらないでしょう・・・」
「でも、もう決定されてしまったし、仕方がないわ・・・(ますます不安気に)」
アントワネットの返答はとても曖昧で、この決定が"彼女自身の意見によるものではない"ことが察せられました。 「降ろして欲しい!」というのは、私の相棒ヴィヴィアンの意見でしたから。
(シニア)パーサーに意見する、なんて滅多にしないのですが、お客様のことを思ったら言わずにいられませんでした・・・
もしも、私の相棒が、4本線(=パーサー)でなく通常どおり2本線(=ビジネスクラスCA)だったら、アントワネットも機長も、きっと彼女にだけでなく、私にも意見を求めていたのでは・・・
と思うと、とても残念でしたが、ヴィヴィアンには結局何も言いませんでした。
彼女はいつもはパーサーなんですもの、ついついパーサーやってしまうっていうのもわかります。
"パーサーがビジネスクラスを担当する"なんてことも普通はありませんし・・・。
それに、もしも機種がMD-11(=パーサー・ワーク・ステーションとビジネスクラス・ギャレーが隣り合っている)でなかったら・・・シニア・パーサーのアントワネットが、(後方のエコノミークラス・ギャレーにいる)パーサーのユィックに相談することなく、ビジネスクラスを担当しているヴィヴィアンにばかり意見を伺って彼女をパーサー扱いしてしまう、なんてことも、きっと起こらなかったでしょうしね・・・。
必然的に起きてしまったトラブルだったのかな・・・と思って。
でも、MD-11でパーサーと組んでビジネスクラスを担当するのはもうxxx
・・・と思ったフライトでした。

(帰りの便では私もコックピットに・・・!)
(真っ平らなオランダ上空)
(お天気が良かったので
湖はセイル・ボートでい~っぱい!)
次のフライトは、久し振り(半年振り)の日本路線–大阪便-です