2007年1月
(LOS)
今年の初仕事・・・は、ドバイ便の予定が、前日変更になって、ラゴス便です。
ラゴス便は、オランダ人クルーの不人気路線ベスト3に入る路線。
もしかしたら一番嫌われているかもしれない路線です。
理由は多分・・・① フライトリーブ(=乗務の後のお休み)が短い
(→100%で乗務している場合2日間)こと。
② 政情不安であること。
③ マラリア地域であること。
④ ナイジェリア人が無礼であること。
私は、以前に一度だけ乗務したことがあるのですが、
① 50%で乗務している私にはお休みは十分ある(普段が長すぎるくらい)ので問題なし。
② 確かに、ホテルからの外出は禁止されていました。 ホテル敷地内で銃撃戦があったこともあると聞きました。
③ 確かに、ここでマラリアにかかってしまった同僚を何人も知っています。
④ 確かに、機内で「ツッ、ツッ!」と舌を鳴らして犬でも呼ぶように呼ばれたり、「Give me coke!」と言い方が乱暴だったりしましたが、それがこの国では普通なことだと思えば気にならないこと。 オランダ人が普通だと思っていることだって、日本人からしたら無礼なことも沢山ありますので、既に"慣れていた"ということもあったと思います。
それよりも、前回のラゴス便で私の印象に残っているのは、
① 夜間の乗務で機内も照明を落としてあって真っ暗な中、コールボタンで呼ばれて行くと、暗闇にお客様の白い歯だけが浮き上がって驚いたこと。
② ホテルの朝食のパンが美味しかったこと。
でしたので、今でもそうなのかしら・・・とワクワクして出掛けました。
空港到着後、リポーティングを済ませてパーサーに挨拶に行くと、前に乗務したことのある(→いつ・どの便で一緒だったのかは・・・思い出せませんxxx)トン(Antonの略称)。
いつものように握手をして挨拶を交わすと
「misae! キミ、マッサージできる?」
「(え?いきなり、なんで??) ええ、できますけど・・・」
「やっぱり! いやぁ、前のフライトで、たまたまマッサージの話になった時に、クルーの何人かが"マッサージが上手なCAを知ってる"と言ってキミの名前を挙げてたんだよ。 ボクも妻にマッサージを教えてもらえないかなぁ。」
・・・子供の頃1回50円で父の肩を揉んで磨いた技(?)が、今、役立っています・・・

ブリーフィング・ルームでブリーフィングの時間まで待っていると、後から入ってくる同僚達が私を見て
「え??? ラゴス便よね???」
と、戸惑います。
私がいるせいで、(現地採用の乗務員がいる)日本路線あるいは中国・韓国路線かと一瞬思ってしまうわけです。
オランダ人はいろいろな面で"差別を嫌う"人達なので、いつもあとから必要以上に詫びられて、
「毎フライト皆そう思うわよ~私はどう見てもオランダ人には見えないのだから、気にしないで!」と言うのですが、
今回はパーサー以外(トンは私のことを知っていましたので)全員から謝られて、かえってこちらが申し訳なくなってしまいました・・・

トンのブリーフィングは独特です。
「今日初めて会う同僚達と、これから最高のチームワークで仕事をするのだから、まずはお互いの名前をしっかり覚えないとね!」
と、全員の名前覚えから。
通常は、ブリーフィングの最初にパーサーが一人一人名前を呼び上げ、呼ばれた人が手を(オランダ式に人差し指だけ立てて)挙げるだけなので、(なるべくブリーフィング中に全員覚えられるように努力はするのですが・・・)ブリーフィング中に全員の名前を覚えられないこともあります(→そういう場合は、機内で覚えます。)
今回は、パーサーから、座っている順に自分の名前を伝え、何人目かで、自分の手前の人までの名前を言う、というテスト形式。 最後には、全員分覚えられる、という仕組みです。
次に、乗務で大切だと思うことを一言ずつ。 この仕事に対する、いろいろな人のいろいろな意見を聞けて、興味深かったです。
ラゴス便の機種はMD-11。
担当はビジネスクラスです。 満席。
いつものように、お客様の搭乗前の準備、搭乗開始以降のウェルカム・ドリンクやメニューなどの配布を、相棒と協力して行います。
MD-11のビジネスクラスは、ギャレーが客室の中央にあるので、全体を把握するのに少々不便なのですが、
相棒のロバート(リッキー・マーティン似のスチュワード・元軍事警察官)がとても働きやすい相手だった
(→忙しい時は、二人で同じ事をしていると余計に時間がかかることがあるので、相手がまだやっていないことを先回りしてやるようにするのですが、彼も同じように動いてくれた)
(=私が後でやろうと思っていたことを気が付くとやってくれていた)
ので、と~ってもスムーズにいきました。
飛行中のサービスも、同じ調子で非常にスムーズに進み、いつもならビジネスクラスの方がずっと長くかかるはずのサービスが、エコノミークラスよりも先に終わってしまったほどです。
サービスが終わってから、お食事。
朝、子供達のお弁当作り(土曜日は日本語補習校なので、お弁当はサンドイッチではなく、ちゃんとご飯を炊きます)で忙しくて、コーヒーは数杯飲みましたが、朝から何も食べていなかったので、腹ペコでした。
アメリカからのお乗り継ぎのお客様が何名かお食事を召し上がらなかったので、味見を兼ねてビジネスクラスの前菜をいただきました。
(Mediterranean caponata with smoked salmon)
(日本路線もアムステルダム発は同じ前菜だったと思います。)
主菜は久し振りにクルートローリーから選ぶことに。
クルートローリーには、クルー用のサラダ、ホットミール、デザートのプチケーキ、ヨーグルトや果物、サンドイッチ用食パン、バター、ジャム、スライスチーズ、スライスハム、ミネラルウォーターのミニボトルなどが入っています。
(クルートローリー)
(クルー用のサラダ・2種類あるうちの1つ)
今日は、お魚料理にしました。
耐熱容器に、お魚、にんじん、マッシュドポテトが入っています。
(味は見た目ほど悪くないです)
蛋白源(肉や魚)1種類+野菜1種類+穀物(じゃがいもやパスタ)1種類・・・全て1種類ずつの典型的オランダ料理・・・
オランダの台所はいつもきれいなことで有名ですが、朝・昼はパン、唯一温かい料理を食べる夕食もこんな感じなので、確かにあまり汚れません。
日本では「一日30品目」と言われますが、もしかしたら(=私の想像です)オランダでは「一日1品目ずつでも、毎日違う種類にすれば、1ヶ月で30品目になる」という考え方なのかもしれません。
デザートにはヨーグルトをいただきました。 カラメルソースが美味しいヨーグルト♡
(ヨーグルトもいろいろな種類から選べます→私のお気に入りはコレ)
ラゴスに到着し、クルーバスでクルーホテルへ向かいます。
バスが一般道に出た途端、車内が真っ暗になったので驚いていたら、同僚達が口々に
「真っ暗にしておかないと、クルーが乗っているバスだとわかってしまって危ない」
「襲撃されたこともある」
と説明してくれました。 スリル満点です・・・
よく見ると、クルーバスの前後には、警護車まで!
護衛されてホテルへ向かったのは初めてです。
厳重に警戒されたゲートを通るとホテルの敷地内。
ロビーにあるラウンジの中央の、赤いロープで仕切ってあるスペースが、どうやらエアライン専用のようで、
これから出発する同僚達の他に、他社の乗務員もそこで空港までのクルーバスの到着を待っていました。
チェック・イン後、シャワーを浴びて、クルー・ドリンクへ。
ホテルのバーはとても小ぢんまりしていて(35㎡くらい?)、客は西洋人ばかり。 恐らく皆、エアライン・クルーです。
アジア人は私一人。
しばらく飲んでいると、後から到着したBAのクルーもクルー・ドリンクに集まり始めました。
そのうちに、その中の一人が私達のテーブルへ・・・
「君達どこのエアライン? 私はBAの機長のチャーリー」
一番近くに座っていたアシスタント・パーサーのアニータが代表して私達を紹介。
「キミはオランダ人じゃないでしょ? どこから?」
と聞かれて
「日本からです。 あなたはイギリスのどちらから?」
「オックスフォードですよ。」
学生時代に約1年留学したことのあるオックスフォード。 もっといろいろお話したかったのですが・・・
英語が出てこない・・・( ̄_ ̄|||)
懐かしい&大好きなクィーンズ・イングリッシュなのに・・・
言われていることはわかるのに・・・
言いたいことが言えないxxx
どうしてもオランダ語の単語がでてきてしまう・・・

他のBAのクルーも何人か加わって、たまたま趣味が音楽だという人が多かった(パーサーのリチャードさんはオーケストラのホルン奏者だそう)ので、音楽の話をしているうちに勘が戻ってきましたが・・・
言葉はやっぱり使わないと忘れてしまいますネ。 勉強しなおさないと。
クルードリンクの後、ホテル敷地内にあるディスコへ。
ラゴス便に頻繁に乗務する夫から話はよく聞いていましたが、行ってみると、本当に、男性はみんな西洋人で女性はみんな現地の娼婦・・・
独特な雰囲気だったので、早々に退散しました。
翌日は朝食の後、部屋でピアノの練習をし、ランチはプールサイドで。
昨日のBAの機長チャーリーが美味しそうなのを食べていたので、同じものをオーダー。
メニューには無い「ナイジェリア風チキンシチュー」だそうです。
辛くて美味しかったです♪
(ナイジェリア風チキンシチュー)
食後は仮眠をとって、帰りの便の乗務。
再び警護車に守られながら空港へ。 アメリカ並みに厳重なセキュリーティー・チェック(=安心です)。
帰りの便も満席でしたが、ロバートとのチームワークのお陰で、丁寧かつ迅速なサービスができ、(夜出発し、早朝にアムステルダムに到着する便でしたので)お客様にも早くお休みいただけて良かった!
サービスが終わってからクルーボックス(=帰りの便でのみ調達されるお弁当もどき)をチェック。
クルーボックスには4種類あって、(レギュラー/ベジタリアン/フルーツ/ローカル)行きの便の乗務中に注文用紙に希望を書き込んでおくと、帰りの便に希望のボックスが搭載されるようになっています。
(クルーボックスの注文用紙)
レギュラー・ボックス、ベジタリアン・ボックス、フルーツ・ボックス、ローカル・ボックス(アメリカ、カナダ、メキシコ発はシリアル・ボックス)から選べて、私はいつも(現地料理が食べたくて)ローカル・ボックスをチョイスします。
例えば、日本路線だと手巻き寿司や稲荷寿司が入っていたり、中東だとメッツァが入っていたりするのですが、ナイジェリア発は普通のサンドイッチでした・・・

(ラゴス発のローカル・ボックス)
ビジネスクラスのお食事も余っていたのでチェック。
(前菜 : Air-dried beef with a salad of tomatoes and Mozzarella)
「トマトとモッツァレッラのサラダ」とメニューにあるのに、トマトの上にのっていたのが普通のチーズだったので、(幸いお客様からのクレームはありませんでしたが)パーサーに報告。
(主菜 : 左=Grilled chicken filled with spinach 右=Seafood Chilli)
(クルー用のミネラルウォーターのボトルには、ラベルを少し剥がした所に記名)
到着前にパーサーのトンに呼ばれてパーサー・ワーク・ステーション(=パーサーが書類の処理をしたり、機内映画などのビデオのセッティングをするスペース)へ行くと、
「これを会社に提出しようと思うんだけど・・・」
見るとコンプリメント・レターで
「misaeは、本当に丁寧で心のこもったサービスをするCAである。 彼女のサービスを見ていて、自分も乗客として乗った時には、是非とも彼女のサービスを受けたいものだと思った。」
と書いてありました。 ありがとう、トン!
今年の初仕事、(心の中で)ガッツポーズができるフライトになりました・・・

でも、半分は相棒のロバートのお陰。 もちろん彼もトンからコンプリメントをもらっていました。 同感です。
これから2月16日まで冬休み。
乗務がなくて残念ですが、来月は、長男のCito Toes (シト・トゥーツ=中学入試のようなもの)があります。
サポートしてあげないと・・・!
休暇明けは、香港便です。